『手塚治虫名作集』のラストを飾るのは、手塚先生の分身が登場し、大阪大空襲の焼け跡の中から這い出してきた男達の哀しみが織り成すドラマです。
実在の人物と架空の人物を登場させ、「戦争」を描かれています。
戦争ほど人から何もかも奪ってしまうものは他にありません。
「何一つ悪いことをしていないのに、こうもみじめな思いをしなければならないのか」焼け爛れた廃墟を歩きながら、手塚先生の分身である高塚修は一人つぶやきます。
その頃、軍需工場の跡継ぎ、葛城健二。コソ泥トモやんとヒロやん。主人公の哲は、同じように焼け跡の中にいました。
戦後の混乱期。彼らは食べるために各々の道を歩み始めます。
やがて、その道は彼らを引寄せていきます。
未完、で終わっていますが、この物語は、読者は、そこから続きを自らが描き始めることになるのではないでしょうか。
戦争という行為はどの国のどの場所で起きたとしても、ここに描かれるような悲しみを生み出しています。
手塚先生は、この物語で読者にそれを伝えようとしていたと推測しています。
そして、徒手空拳で生きてゆく人々の姿の清冽な姿を描き残そうとされたのではないか、と思います。
名作と呼ぶに相応しい作品です。
モデルの一人、葛西健蔵氏のあとがきが読めるのも嬉しい限りです。