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どこから行っても遠い町 (単行本)

川上 弘美 (著)
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Book Description

捨てたものではなかったです、あたしの人生――。男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ「平凡」な主婦とその姑、両親の不仲をじっとみつめる小学生、裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房……東京の小さな町の商店街と、そこをゆきかう人びとの、その平穏な日々にあるあやうさと幸福。川上文学の真髄を示す待望の連作短篇小説集。


内容(「BOOK」データベースより)

男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話、真夜中に差し向かいで紅茶をのむ「平凡」な主婦とその姑、両親の不仲をじっとみつめる小学生、裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房…東京の小さな町の商店街と、そこをゆきかう人々の、その平穏な日々にあるあやうさと幸福。短篇の名手による待望の傑作連作小説集。

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5つ星のうち 5.0 東京のどこか、通り過ぎたことがありそうな町, 2008/12/17
散歩で通ったことがあるかもしれない、と思ってしまうような東京の小さな商店街とその町に住んでいる人々の話。短篇の面白さは、1つ1つの作品でも楽しめるけれど、通して読むと人々が数珠繋がりになっているところ。しかも川上さんの作品は、ちょっとしたセリフや描写が切ないのだ。ウン十年生きてきて、いろいろ痛い目にもあってはいるけれどいまのところ「まぁまぁかなぁ」という私の人生。この本に登場する女のひとのように、「捨てたものではなかったです、あたしの人生――。」と最後に言えたらいいなぁ
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5つ星のうち 3.0 見たくないのに、見るんだねーという作者の諦念, 2009/1/10
「風花」以降、弘美さんの小説はぎこちない閉塞感にさいなまれている。思えば「神様」から「溺レる」「センセイの鞄」に至るまで、弘美さんの小説は荒唐無稽ながら豊かで自由奔放な世界を作り上げてきた。ここ最近にいたって、その世界に白々しく現実じみたものが介入してきている。ときおり差し挟まれる現実的な諦念に、読者は気勢をそがれ、小説に埋没することができなくなる。

「いろいろなことなど、見たくない。つくづく、思った。でも、見なければ、生きてゆけない。
そのことを、残念ながら、わたしはいつしか知るようになっていた。ここまで生きてくるあいだに。」

ひとつめの物語である「小屋のある屋上」に実際に書かれていた文章である。
これはどうにも、作者自身の述懐であるように思われる。いろいろなものを見てしまった作者は、過去に自身の描いたような空想的世界への疑心を払えなくなってしまったのではないか。

ものを書くというのは、それに徹するということである。
弘美さんがいろいろなものを見、知った上で、また再び独自の生き生きとした作品を描き出すことを、心から熱望する。
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5つ星のうち 4.0 口に出す言葉の裏の、形にならない気持ち, 2009/8/23
川上弘美の本を読んでいると、いつも、なんとも言えない感情を得る。
こうした「レビュー」のような、彼女の文章を規定した事を書くこと自体、彼女の本には似つかわしくないような。

彼女の小説で主体となる語り手の多くは、口下手な人が多い。
胸の中でぐるぐるとする、沢山の相反する気持ちを、何とかまとめてようやく、短い言葉にして、伝える。
その言葉は、相手にちゃんと届いたり、一部だけ届いたり、まったく届かなかったり、曲解されたりするけれど、それを語り手は、そのままにする事も多い。
そんな情景を読んでいると、新聞や、TVや、映画などのメディアは、「分かりやすい」事を中心に世界が出来上がっているような錯覚を与える事で成り立っているように思ってしまう。

また、「口下手であり、説明できないけど、何かの意味のある行動」を描写するのも彼女の表現の特徴だ。

問題のない夫と離婚する理由が「一緒にいると眠れない」という事をどう表現していいのか分からない女性。
死んだ妻の愛人と「淋しいから」と言って一緒に暮らす男。
父の浮気などで人の愛情に対し不信感を感じていながら、一緒に暮らし始めた男と離れられない女性。
双方の理由で付き合ったり別れたりを繰り返しながら、年上の女性と一緒に店を営む男。

そんな、沢山の「言葉に出来ない気持ち」を持った人々が、袖すりあいながら生きている町。

言葉にならない思いを、言葉で表現する川上弘美が、私は、いつも、とても好きだ。
そして、読んだ後、いつも、自分の中の、人の中の「言葉に出来ない気持ち」にそっと思いを馳せるのだ。


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