50枚ほどの思い出の写真とともに綴られる、どくとるマンボウ北杜夫の回想記。たしかに、他のエッセイで読んだエピソードも多いのだが、作家生活ばかりか人生の最終コーナーを廻った著者がその一生(まだ生きているけど)をエッセイとして一つの作品にした、ということが嬉しい。しかも、「どくとるマンボウ」だ。
著者にとって、「どくとるマンボウ」シリーズと、ただの「マンボウ」シリーズとは、その力の入れ具合によって区別があるのだと「どくとるマンボウ医局記」に書いてあった(他でも書いているかもしれないが)ことを考えると、純文学作家の著者が世に出るきっかけとなった「どくとるマンボウ航海記」からぐるっと一巡、作家生活を締めくくる作品がこの回想記なのかとも思いながら読み進めてしまった。
そして、最後に掲載されている著者の年老いた姿を見ると寂しさが溢れてきた。
どうも、自分自身の思い出みたいなものばかりを書いてレビューの体をなしていないが、この作品は、北杜夫作品の読者であり続けた私にとって、読むことができたというだけで★5つだ。そうでない人にとっては意味のない作品かもしれないが、ファンにとっては読まなければ後悔することになる作品だと思う。
「白きたおやかな峰」に登場したコックのメルバーンの写真もみることができたし、もう思い残すことはない…ということは決してなく、今度は老体にむち打って文学作品も書いて欲しいと思うのがファンの心理である。