死を学際的に研究した本としてかなりよく出来ている。ここしばらくの死生学ブームにより、様々な専門分野の人が死について色々と論じているが、少なくとも著作の上では、分野を越境した思考の交流はあまりなかった。東大出版会の死生学シリーズなどはどれもたいへん興味深いが、自由研究の寄せ集めである。
本書はこの不足を埋めた。ホスピスでのフィールドワークに基づく論考を軸に、人間にとって死とは何かを、哲学・心理学・教育学・社会学・宗教学・文学などの観点から複数の執筆者が相互にリンクをはりながら論じている。私が死ぬこと、大事な人を看取ること、この両方について具体的にも抽象的にも参考になる論述が少なくなく、勉強になる。
あくまでも終末期医療という現場の実践を重視しつつ、しかしそこから広げて人間をとりまく死の文化の奥深さを問い深めていく。臨床の知としての死生学の、ひとつの模範となる一冊であろう。