アメリカの田舎町クィンシーズ・ギャップで結成されたダイエット・クラブ〈デブ・ファイブ〉の男女5人組が毎回起きる殺人事件の謎に素人探偵として挑みながら深い友情を育んで行く愛あり笑いあり涙ありの大人気シリーズ第5弾です。前作ではめでたい事にメンバー全員に恋人らしき存在が出来まして気分上々幸せ一杯で順調かと思われましたが、意外にも何かと苦労が多くそれぞれに複雑な胸の内を抱えている気配がうかがえます。そんな中であっと驚く二つの劇的な変化が起きて新たに大きな幸福が訪れますので、本書はシリーズのファンには絶対に読み逃せない重要な転換点の巻だと言えるでしょう。
父ジャクソンとミラの結婚式が近づき、心が浮き立って発奮したジェイムズは新居探しとダイエットの再開を決意する。しかしそんな高揚した気分に水を差す様に家にやって来たミラの妹で「お菓子の女王」と呼ばれる有名な料理家ポーレットはわがままで口汚い毒舌家のまさに「とんでもないパティシエ」だった。やがて町中の人々がうんざりし始めた頃、何と彼女は突然死体となって発見される。お祝い気分が一転して悲しみに沈んでしまった父とミラに元気を取り戻そうとジェイムズらデブ・ファイブのメンバーは不審な死の真相を追い掛ける。
これまでシリーズを読んで来て感じる著者のミステリーに対する姿勢は罪を逃れ様と画策する狡猾な犯人を描く事やパズル性の追及にはなく、家族間に起きる犯罪の動機や事情といった悲劇的な実態を赤裸々に描く事にあるのだと思え、本書でも犯人の狂気の性が生々しく伝わって来ますのでやはり著者の狙いは成功していると思います。コージー・ミステリーを読む楽しみはやはり推理とは別に愛情たっぷりに描かれる人間ドラマの面白さにあるでしょう。ジェイムズの職場の図書館で毎回起きるスコットとフランシスの双子の兄弟が活躍する事件は今回最後まで読んでもやや真相が解り難いです。本書の目玉の一つ目はクイズマニアの郵便局員ベネットがクイズ番組〈ジョパディー〉に出演して優勝が目前となった時に自ら決断し実行した驚くべき愛のパフォーマンスです。ベネットが優勝者となる事以上に町中がお祭り騒ぎになって盛り上がるのが微笑ましいです。そして後半にジェイムズに訪れる思いがけないサプライズは男女の愛ではありませんが彼の心から幸福な気持ちが伝わって来る最高の出来事でしょう。まだこの女性との愛が本物なのかどうかは未知数ですが、これまで働く女性との相性が良くなかった事を思えば見込みは十分ありそうで期待が膨らみます。でもここまで二転三転して来たジェイムズの愛の行方は予想不可能で、ルーシーとの仲が今後どうなって行くのか興味深く見守りたいと思います。
シリーズが巻を重ねるにつれてデブ・ファイブのメンバーに次々に訪れる愛のドラマに興味津々まさに心が浮き立つ思いで、次回はどんな幸福なサプライズが読めるのか期待して楽しみに待ちたいと思います。