マンガ風ではあるが、正確にキツツキが描かれた表紙を見て内容が想像できた。著者はバードウォッチャーで、野鳥の生態をコミカルに描いたバードウォッチングのマンガ。普通なら、この手のマンガは絶対に買わない。ぼくは昔、プロのパードウォッチャーだった。今更、野鳥のウンチクなど見たくない。それでも、興味を持ったのは、かわぐち・かいじなどおよそ野鳥の生態などに興味を持ちそうもない人が激賞したという説明を読んで不思議に思ったからだ。
確かに作者はバードウォッチャーだし、内容のほとんどは庭や近所で見られる野鳥やネコとのふれあいを描いたものだ。作者の日常生活を描いた私小説に近い部分も多い。生半可に描いたらただの内輪受け、自己満足になるだろう。
第2羽(話)、第3羽(話)と読み進めてだんだんとわかった。ただの野鳥オタクのマンガではない。生き物を通して、作者の「人生観」というか「世界観」を語っているのだ。団地の片隅に生えていた実をつける植物のヤブが、ある日刈り取られ、園芸植物が植えられてしまった。作者は「花いっぱい運動 自然を大切に」と書かれた看板を描写している。
第9羽、ラストの1ページも美しい。たった3コマ。「見上げると、山藤が咲いている」「何十年もかけて天辺までのぼりつめ、絞め殺された宿主がついに倒れるとき」「自分だけは天に登るつもりでいるらしい」。この視線のありようは誰かに似ている。あの『博物誌』で「ヘビ 長すぎる」など軽妙なエッセイを書いたルナールを思い出させるのだ。
地に足をつけた生き方を貫き、ささいなことを喜び、楽しむ。「それが日常のすべてだなんて、つまらない人生と思ったこともあったけど。でもやっぱりそれがすべて。このマンガを描くたびに思うのです」という、作者の述懐で1巻が閉じられる。じんときて、もう一度読み直したくなる。