11の独立した短編集だけど、大きな設定は共通しています。とりつくしま係がいて、主人公に、何にとりつきたいのかを確認して、基本的に無機物(魂の無いもの)であればとりつくことができる。これ以上、小説の設定について書いてしまうのは、未読の方の楽しみをそぐ可能性があるので伝わりにくいのを承知で核心はぼやかしたままにしておきます▼最初の一篇、「ロージン」がいきなりいい。さすがに歌人だけあって、句点の打ち方まで完璧。文章の区切り方に狙いと意図が見えて、これは音読するべきお話なのだと思った。楽譜を読んでいるような読書。愛する息子の大事な試合。その時を見守りたいからと、息子の手の平で遊ぶロージンにとりつくことを決めた母。ロージンの粉が空に舞って、母だったものの意識も静かに霧消してゆく…。大切な家族を見送ったばかりのわたしは、この一篇でもうすっかりやられてしまった。これはずるい。そして、素晴らしい。なんとでも解釈できる余地を残しながら、誰にも届く根っこをしっかりと書いて伝えて読ませる(やはり音読がいい)ことに成功している。もしかしたらわたしの身の周りを飾るものたちの中に、わたしのことを思ってくれいた人たちの魂がとりついているのかもしれないと思うと、少し元気になる。勇気が湧く。さっそく著者の前作もチェックしてみようと思っています。