猟奇的な物語、と思われがちな『とりかへばや物語』ですが、この本を読むと、人間の心理が深く描かれていて、やはり古典として残ったのにはそれなりの理由があることが分ります。父親があっさりと男女を取り替えて育ててしまおうと思うのも驚きですが、男性として育てられた女性に男性として結婚話が来た時に、母親が「相手の女性は奥手のようだし、男女のことがなくても大丈夫」という判断をして結婚させてしまうのはもっと驚きです。はらはらするうちに、二人は結局もとの性に戻ってめでたしめでたしとなるわけですが、その筋の運びに無理がありません。手軽にあまり有名でない古典を楽しめるのがいいですね。品のよい現代語訳ですし、先行する源氏物語などの影響関係もとても分りやすく書かれていますのでお勧めです。カバーの絵も、位の高い感じの女性の後姿で素敵です。