あの3月11日、大津波が襲来した東北では人間の気高さを示す行動がいくつもあった。そして不思議なことも起こった。
乗用車ごと流された人が、ドスンと何かにぶつかり止ったので、車から這い出し九死に一生を得ることができた。後で見に行ったら、それは母方の先祖の墓石であったという。このようなローカル新聞の記者の祈りと希望をこめた話が次へと続く。
大昔の人々は天災を避けるために伝説や神話として、われわれに教訓を残してくれたのではないだろうか。千年単位でやってくる天災への無力な人間の知恵なのではないだろうか。
本書は現代における新たな伝説を記憶するための鎮魂の書であり、ボランティアにも行けず何もできず、無力を痛感する私にとって、眼には見えぬが何か静まるものを与えてくれる何かなのである。