まだ高度経済成長期が到来していなかった昭和30年代初期の日本。主人公サツキたち草壁親子3人が田園風景広がる所沢近郊に引っ越してきた。彼らは病気療養中の母親の退院を心待ちにしながら、新しい家で生活をはじめる。住みはじめてまもなく、サツキの妹メイは家のそばの神社で不思議な生き物に出会う。メイにはそれが「トトロ」と鳴いたように聞こえた。
事件らしい事件はとくに起こらない。主人公たちが『風の谷のナウシカ』、『天空の城ラピュタ』のように、特別な使命を帯びているわけではない。だが彼らは日々の生活を楽しみ、精いっぱい生きようとしている。日常の何でもないディテールの積み重ねが、豊かな時間を作り出している。ページをめくって、妹思いのサツキやおてんばなメイ、何を考えているかよくわからないトトロたちを追っかけていると、そのことがあらためて心に染みてくる。(文月 達)
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