ラスト一頁に戦慄させられた短篇がいくつかあって、その“とんでもなさ”が非常に印象に残りました。深沢七郎の「報酬」、岡田睦の「悪魔」、北杜夫の「異形」の三つの短篇。なかでも、「悪魔」のなめくじを彷彿させる気味悪さ、「異形」の異様に突き抜けた肌触りに、ぞくりとさせられましたね。思いがけない話の着地のさせ方に、「うっ・・・・。なんじゃ、こりゃ?!」と。読後、目が点、口が○(まる)の、呆然自失状態に陥りました。
文庫巻末に、編者の北村薫と宮部みゆきの「解説対談──しかし、よく書いたよね、こんなものを」(2010年9月28日。山の上ホテルにて)を収めています。で、この対談がめっぽう面白い。<本対談は、作品の内容や結末にも触れておりますので、最後にお読みください。>の注意書きを守って、この巻末対談に行ったんですけどね。「さすが、読み巧者のふたりだけのことはあるなあ」て、あちこちで興趣を誘われましたから。「あ! それは私もそう思った!」とか、「なるほど、そういう受け止め方もできますか」とかいった感じで。
本文庫の収録作品は、以下のとおり。
穂村弘「愛の暴走族」
蜂飼耳「ほたるいかに触る」
川上弘美「運命の恋人」
塚本邦雄「壹越(いちこつ)」
飯田茂実「一文物語集」より『0〜108』
戸板康二「酒井妙子のリボン」
深沢七郎「絢爛(けんらん)の椅子」
深沢七郎「報酬」
松本清張「電筆」
大岡昇平「サッコとヴァンゼッティ」
岡田睦「悪魔」
北杜夫「異形(いぎょう)」
なお、摩訶不思議な話のタネを集めたみたいな、不条理で幻想的な雰囲気が曰く言い難い超短編集「一文物語集」は、北村薫さんが紹介しているように、『
一文物語集』という本で再刊されるとのこと。これはぜひ、手にとってみたいですね。