かつてこれほどまでに心を打ち震えさせるライトノベルがあっただろうか。
かつてこれほどまでに「戦争」の理不尽さを描いたライトノベルがあっただろうか。
そして、これほどまでに作家の思いが物語の中に散りばめられたライトノベルがあっただろうか。
私の、上下巻を読破した後の最初の感想です。
はっきり言います。もう、両手を上げて降参しました。評価を飛び越して★8個くらい付けたいほど感動させられました。泣かされました。
この作品はもはやライトノベルという枠を遥かに飛び越え、文学作品と呼べる域に達しているのではないででょうか。
アニメではなく、4時間くらいの超大作で実写映画化をして欲しいと思える作品でした。
物語は、
とある飛空士への追憶 (ガガガ文庫 い)で敵として現れた、「帝政天ツ上」の撃墜王、千々石武夫の生き様を描いた、超がつくほど硬派な架空戦記。
舞台は明らかに第二次大戦の日本対アメリカの戦いをモチーフにしています。
しかしながら、この作家はそれをなぞるだけで終わらせるという事をせず、きちんと「帝政天ツ上 対 神聖レヴァーム皇国」の物語に昇華させていて、力量を感じさせます。
おそらく以前から詳しく知っていたのでしょうが、この本を執筆する際、この作家は第二次大戦における南方の戦いをよく勉強したのだと思います。そして涙したのだと思います。
随所に史実と似た描写がされていますが、それは単なるページ稼ぎではなく、この作家が感じた、過去に戦死した英霊達に捧げる敬意だと感じるシーンがいくつもあった事からも分かります。
それの最たる例が、史実となる硫黄島での戦いをモチーフにした、伊予島での戦いの描写です。
元々主人公千々石との関連性はそれほど高くなく、本来なら簡単な状況描写だけで終わっても良かったのですが、そのあまりにも壮絶な戦いに心を動かされたのでしょう、細かな所まで凄絶に描写されていました。
読まれた人の中には「どこかで見たような話だな」とか「王道過ぎてひねりが無い」とか思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この物語には「ストーリー」以外の、作家からの読者へのメッセージが強く込められていると私は確信しています。
それをここで文字にしても、表面だけの薄っぺらな物しか伝わらないでしょう。
ぜひこの本を手にとって読んで頂き、そのメッセージを受け止めてください。
失礼を承知で言うと、おそらく女性読者には受け入れられないほど「男の理論」の物語です。
しかし、ラノベ以外の小説も読める読解力を持っている方や、物事の機微を理解される方は、ぜひ一読して頂きたい作品となっています。
「追憶」を読んで面白いと思えた人は、黙ってこの本を手に取ってレジへ向かってください。
この作家が本当に書きたかった物は何なのか、きっと分かります。
本当に「作家」と呼べる実力があるライトノベル作家は、私の中では今の所この人のみです。