ある日、自分の背中の殻に悲しみがいっぱい詰まっているのに気づいたでんでん虫が、
もう生きていられぬと友達に相談する。
ところが、みんなの殻も悲しみでいっぱいだった。
「悲しみはだれでも持っているのだ。私ばかりではないのだ。
私は、私の悲しみをこらえていかなきゃならない。」
ということに、このでんでん虫は気づいて、もうなげくのをやめたというところで終わっている。
でんでん虫の背中の殻に“悲しみ”を感じた作者の感性がおもしろい。
1998年、インドであった国際児童図書評議会でのビデオ講演で、
皇后さまがこの絵本に触れられている。
この絵本には、同じ頃につくられた「でんでんむし」も収録されている。
お母さんのでんでん虫と生まれたばかりの子どものでんでん虫とのやりとりである。
葉っぱの先に丸く光る朝露、白い葉っぱのようなちょうちょ、葉っぱと葉っぱの間に遠く見える空、
その空の向うには・・・。
「お母さんまでもわからない不思議な遠い空を、細い目をいっぱいのばして、いつまでも見ていました。」
未知なるもの、不思議なものへの興味が次々と広がっていくことの楽しみが伝わってる。
もう一つ、ちょうちょとホタルが一本の木に集まるという「木の祭り」。
緑の野原の真ん中にぽつんと立っている木に、白い美しい花が咲く。
その周りに、昼の虫のちょうちょと昼の虫のホタルとが集まって、夜遅くまで楽しく遊んだというお話。
いずれも、上矢津さんの美しい挿絵が印象的だ。
お話にも絵にも、自然、生き物、いのちへのあたたかい眼差しが注がれている、心温まる一冊である。
でんでん虫の二つのお話は、梅雨の季節のおはなし会などにいかがでしょう。