たとえばあなたが,手紙の結語に「かしこ」と書いていいのは女性だけ,といった常識的マナーをわきまえている方なら本書は全くもって必要ありません。
本書に書かれていることを大略すると,次のようになります。
・人にものを送る(例:取引先への資料,知人・親類縁者・お世話になった人への贈答品など)際は,一筆箋で手書きの一言を添えましょう。
・手書きの際には万年筆で書きましょう(万年筆初心者にはペリカーノジュニアがおすすめ)。
たったこれだけです。
私は他に買う本があり,ついでにタイトルで気になっていた本書と合わせて注文しましたが,あまりに当たり前のことが書いてあるだけの内容に愕然としました。
当たり前のことを本で書くなとは申しませんが,本書の惹句に「付き合い上手になって,仕事が驚くほどうまくいく」などと大見得切っておいて,しかもタイトルは「できる大人の“一筆添える”技術」。いくらなんでもこれでは看板倒れでしょう。まともな大人にとって本書の内容は,仕事ができる人うんぬん以前の,「できて当たり前」の前提条件だと思います。
「できる大人」はその先のことをやっているはずですし,私もそれが読めることを期待していました。
まあ,企画とタイトルにまんまとのせられてしまったわけですが,これで定価1365円はちょっと勉強料としては高くついてしまいました。
本書の購入を検討している方は,可能ならば書店に足を運んで実物を見てみることをおすすめします。目次をさっと見て,自分はすでにやっていることだと思えば買わなければいいし,そうでなければ購入してもよし。
著者の文体自体は,無機質なマニュアル本調ではなく,本当に書くことが好きだという気持ちが伝わってくるもので,悪くないです。
そういう意味では,高校生〜大学生くらいの読者にとってのマニュアル本の一つとして有益なものでしょう。
いい大人が本書を読んで「なるほど!」と感心しているようでは,いささか恥ずかしいかと。