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人心を捉えるツボを心憎いまでに備えた小説である。人物キャラクターが鮮明で、ほのぼのしたホームドラマの体裁を保ちながら、平凡とはいえない家族の肖像が生き生きと描かれているのだ。読者を笑わせ時にほろりとさせる。そんな手際が光る。
タイトルにも登場の照子は岩田春男の妻。春男が復員し、大阪池田市でアメリカ仕込みのパン工場を始めたころから、照子の強烈な個性が発揮される。池田市で初のテレビ喫茶を開き、4人の娘のうち長女にフィギュアスケートの才能があると知るや一流コーチにつかせ、次女にタレント的能力があると判断するや舞台に立たせる。天啓にも似たひらめきと夢を孕んだ上昇志向は、娘たちをやがてオリンピック選手や大スターの地位へ押し上げるに至る。
背景である昭和半ばという時代は、戦争の傷跡を覆ってさらに未来を信じ、豊かさを率直に求めることのできた時代だったのだということが、よく理解される。かたや会話だけでなく地の文にも大阪弁があふれ、そのテンポの良さがストーリー展開の軽快さを促す。そして照子のエネルギッシュさとは裏腹の、穏やかでのほほんとした春男の飄逸(ひょういつ)さが妙に心地よい。惜しむらくは長女次女に比べて下の2人の姉妹の陰が薄く、家族全体のダイナミズムとして描かれなかったことだろう。
岩田家のモデルは、著者なかにし礼の妻の家族。次女は女優のいしだあゆみである。(松平盟子) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
内容(「BOOK」データベースより)
空襲をかいくぐって披露宴を敢行した春男と照子。復員して信託会社に就職した春男だったが、いきなり大チョンボ。一から出直しとばかりにパン職人に。やがて照子のアイディアで始めたテレビ喫茶が大当たり。春子、夏子、秋子、冬子の四姉妹もすくすく育ち、中でも春子は、ひょんなことから習いはじめたスケートで、見る間に才能を発揮する―。親子の愛が育んだ大きな奇蹟の物語。今、家族の時代に贈る国民的ホームコメディー。
内容(「MARC」データベースより)
平成の新「国民的ホームコメディー」誕生! 戦後の復興期を舞台に描く、パワフル母さんと、娘四姉妹の泣き笑い。母の愛情が生んだ2つの奇蹟の物語。『北海道新聞』等4紙連載を加筆修正して単行本化。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
なかにし 礼
作家。1938年中国牡丹江市生まれ。大学在学中からシャンソンの訳詞を手がけ、卒業と同時に作詞家。「知りたくないの」「時には娼婦のように」「石狩挽歌」「北酒場」など、数々の大ヒットを飛ばしたあと、長編小説『兄弟』を書いて作家に。『長崎ぶらぶら節』で、第122回直木賞を受賞。オペラや舞台の台本・演出など多方面で活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
作家。1938年中国牡丹江市生まれ。大学在学中からシャンソンの訳詞を手がけ、卒業と同時に作詞家。「知りたくないの」「時には娼婦のように」「石狩挽歌」「北酒場」など、数々の大ヒットを飛ばしたあと、長編小説『兄弟』を書いて作家に。『長崎ぶらぶら節』で、第122回直木賞を受賞。オペラや舞台の台本・演出など多方面で活躍中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)