目黒考二さんが紹介していた話が面白そうだったので購入しました。短編の連作集ですが、設定が面白く、楽しく読める本でした。
ではどんな設定か? それをここで書いていいものかどうか少し迷いましたが、目黒さんの紹介話でその設定を知ってから読んだ私としては、問題なし、と判断して記すこととします。もし、まっさらな状態でいたい方は、この先は見ない方が無難でしょう。
その設定というは、てふてふ荘の6つの部屋に地縛霊が住みついていることです。地縛霊とはいっても、別におどろおどろしい話にはなりません。この地縛霊、それぞれが事情を抱えており、成仏することができずにいます。成仏するには、同じ部屋に住む人間に触ってもらうしかありません。ただ、人間からすると、目には見えるし、会話も交わせるけれど、触れることだけは簡単にはできません。手を伸ばしても、すり抜けてしまいます。人間が地縛霊に触れるためには、地縛霊を幽霊とは思わないような感情の高ぶりが必要になるのです。
ここに物語が生まれる設定の妙があります。地縛霊には死に至った事情があり、部屋の住人にも生身の人間としての悩みがある。それぞれの思いが絡み合った時に、感情が高ぶっていくのです。
話は6部屋分ありますから、通り一遍の「感情」だけで終わらないように作者も工夫を凝らしています。その工夫がなかなか楽しい。私は3号室の話に泣けました。
なお、星4つとしたのは、幽霊が出てくる物語を必要以上にライト感覚で読める物語にしようとしすぎたきらいがあったためです。特に、TVの幽霊番組が絡んでくるのは、いただけなく感じました。