レビュアーとして雫井脩介の「つばさものがたり」を読了した。これまでの作品とは異なって、
これは100%の「ファミリードラマ」だ。夕方から読み始めて、未明までかけて一気に読み進
んでしまった。こんなことは何十年ぶりのことだろう。
物語としては「あらすじ」を聞く限りでは「ベタ」だなあと予断をしてしまいそうだけれど、
実際に読んでみるとこれがぜんぜんちがう。どこが違うのかと考えるのだけれど、どうにも
よくわからないというか、表現が難しい。
あえていうならばこの作品の「透明な光あふれる空気感」かな。
はっきり言って、この作品の構成や文章表現は個人的には好みではない。表現もこなれていな
いところがある。どうにもテンポの悪い第一章と、ぐぐぐっと一気に物語に引き込む第二章は
配置を逆にしたほうが良かったのではないかとさえ思う。
でも、第一章だけ読んで「つまんない」なんていわないで。
第二章から一気に筆が走り、読者を最後のページまで全力疾走させる力強い作品になっている。
こんな風に一気に読み切った作品は、じつに何年ぶりのことだろう。じつに明るく爽やかな
読後感は久しく忘れていたもののように思う。
ふさわしい人々によってこの作品が映画化されることを望む。