野崎洋光さんの本というと、いかに美味しく、いかに合理的にという納得のレシピ本が多い中で、こんどのこの本は異色だ。
日本に四季があり、かつて旧暦の下の生活には、風や光の変化を感じ取り、暮らしの指標にしてきた。
それが二十四節気であり、それに続く七十二候となるわけで、細やかな日本人の文化につながるわけだ。
この本は二十四節気という硬いテーマを、野崎氏の思い出を通して語られていることで、身近な故郷を感じる。
あー、こんなこともあったな、家ではこの季節こういうものを食べていたなーと、それぞれの故郷の暮らしを思い出してしまうような。
料理も素朴なものばかりで、作りたくなるものが多い。レシピページに風景写真や素材写真があるのも楽しい。
特に田植え時の「結い返し」の風習や簡素ながら厳粛な正月の話などが興味深い。
また、何より写真がいい。季節季節の風景写真と料理写真を見ているだけでも楽しめる。
カメラは小林庸浩とある。家庭画報やミセスで見かける名カメラマンだ。温かく、やさしい雰囲気の装丁は、なんとかの有名な長友啓典。
そして、この本のもう一つの役割が帯にあるように、一冊購入すると400円の復興支援金になるということだ。
著者野崎洋光氏が福島県石川郡古殿町出身ということで、本全体に故郷福島への思いが込められていることが読むほどにひしひしと感じられる。
まさに帯文、袖文にあるように、福島弁でていねいを意味する『「までい」の暮らしの原点がここにある』。
こうした小さな暮らしを、私たちは次世代に伝え、つなげていかなければいけないだろうと思わざるを得ない。
簡単なレシピ本ばかりの料理本の中で、こういう本が出版されることはうれしい。秀逸な本です。