アスペルガー症候群と脳性まひ、というマイノリティの身体をもつ二人の立場から「人とつながるためにはどうしたらよいか」という問いについて考えた本。
私は精神科医という立場上、アスペルガー症候群の方と接する機会があるので、その上で感じたことを書いてみたいと思います。
「アスペルガー症候群(自閉症スペクトラム)」の綾屋氏はその特徴とされている
1、相互的社会関係能力の限界
2、コミュニケーション能力の限界
3、想像力の限界
は、あくまで外部からの見立てに過ぎないと述べています。
特徴とされるそれらの現象がなぜ生じるのか、を綾屋氏自身の内面から語っています。その内容は今までの「生きづらさ」がひしひしと伝わってくると同時に、外部からみたアスペルガー症候群と当事者の感覚がかなり異なっていることに驚かされます。
私たちが知っているアスペルガー症候群の症状というのは、あくまで「病気ではない人」からの視点での症状で、その病気を抱えている本人から見た世界というのは、単純に言語化できるものでもなく、同じ病気でもかなり個人差があるものだと感じられました。
医療者側が一方的に決めた症状をもとに、治療を行うことは押し付けになりがちで、その効果はあがりません。しかも相手は気持ちを伝えることに困難を抱えている病気であればなおのことです。
病気に対する前提が違うのだとすると、一体治療にどれほどの効果があるのだろうか、とふと不安になったりもしました。
そういう意味では、本書で取り上げられている当事者研究と言うのは、同じ病気に悩む人同士がその苦しみの構造に気づいたり、ゆるやかにつながれる場として、とても有効なものなのだろうと思われます。
この本はあくまでマイノリティの病を抱えた2人が人とのつながり方を考えた一冊ではあります。
しかし、私たちは「みんな一緒」ではなく「個人らしさ」「個性」を発揮するよう求める社会に日々追い立てられています。そして年功序列の崩壊や雇用形態の多様化などで、社会での人同士の関係性もどんどん薄れてきています。
そう考えると、私たちは誰しもマイノリティになり得る社会を生きているといえるでしょう。そんなときに、この本の「つながり方の作法」は誰にでも参考になる内容になっているので、おすすめの一冊です。