味わい深くも鮮烈な読後感。
触れれば切れそうな娯楽性と、清冽な人情味とを兼ね備えた傑作時代小説。
江戸を舞台に、作庭に情熱を注ぐ職人たちにスポットライトをあてている点は前作と共通。『実さえ花さえ』と並べると、瑞々しさと切なさがさらに増したようにも思えるのは、屈折を抱えながらも一本気でひたむきな“ちゃら”という赤毛の若者のキャラクターゆえだろうか。
作者の思い入れまでもが痛いほどに伝わってくる、気迫の第2作である。とはいえ、この作品を庭に見立てるなら、すみずみまでどこを見ても美しく、完成度も驚くほどに高いのだが、全体としてはいささか意匠に凝りすぎてしまった感もある。登場人物、構想、題材、ストーリー、文体。すべてが磨き抜かれ、だからこそ、どの枝葉もこれ以上は刈りこむことができなくなってしまったか。才能あふれるクリエーター(“ちゃら”のキャラにもイメージがかぶる)が理想を求め、とことんまでこだわって書いたのだということは一目瞭然。処女作であれば「惜しげもなく、あれもこれも盛りこんだ」と、まちがいなく褒め言葉になっただろうが、二冊目となると少し微妙。
もちろん、今回も素晴らしい物語を読ませてくれた作者と、それをみごとな本の形にして届けてくださった出版社に感謝し、まわりの人にどんどん勧めていきたい。あらためて次作も、首を長〜くして待つ覚悟である。だからこそ、できるなら次作ではもう少しだけ、肩の力を抜いて読めるようなものを期待したい。