今年は、ちあきなおみがデビュー(1969.6)して40年目に当たるということで、11月14日,21日の二週に亘ってNHK-BS2で特集が組まれ、そして12月23日には彼女のワンマンショーのライブ盤3点全てがコロンビアから発売されました。ファンにとっては嬉しい限りです。
その中の一つが、このアルバム『ちあきなおみ リサイタル』(1975.1.25)の復刻版です。既にCD化されていた―6枚組の『ちあきなおみ・これくしょん〜ねぇあんた〜』(2000.5.20)に全曲収録されている―ので、際の際まで迷ったのですが、それでも購入に踏み切ったのは、ジャケットの写真が好きだったこともありますが、音質に期待を寄せてのことでした。
美味しく炊けたお米は立つと言いますが、今回の復刻版も音符の一つ一つが立っています。ライブ盤3点の中では最も内容の濃いものだけに、ちあきなおみの歌声を、それが丸められることなく、LP当時のままに聴くことができて、今は入手して本当に良かったと思っています。2枚組CDそれぞれのラベルが当時の2枚組LPを模して印刷されているのも嬉しい点です。
このリサイタル―ちあきなおみにとって最初で最後のものとなった―は、昭和49年(1974)10月22日に中野サンプラザホールで行われたのですが、2000人収容できる大規模なもので、伴奏(高橋達也と東京ユニオン)のバイオリン奏者だけでも60人もいたといいます。一世一代の晴れ舞台がこのように用意されたことは、その後のアレコレを考えると、改めて心から良かったと思います。
今回発売されたライブ盤には全て、ステージの模様が分かる写真が付いているのですが、その中にちあきなおみ本人がアコースティックギターを抱えて歌っている連写ものがあります。「新宿情話」「人生の並木道」「命かれても」が彼女の弾き語りだと思います。そのギターテクニックも見物です。
「イロケの歌」、スターダムにあってもここまで崩せるちあきなおみは凄いとしか言い様がありません。思い切りのよさが彼女の真骨頂でもあるのですが、とにかく凄い!
「裏窓」、好いですね。彼女のジャズは本当に素敵です。フェイクも巧みです。
「VA MON AMI VA」「ねえあんた」では本当に泣かされます。
「喝采」を契機に、“私小説的歌謡”、“ドラマティック歌謡”といったレッテルを貼られますが、このリサイタルはその路線に沿った巧みな構成が成されています。
しかし、このレッテルが、別の意味でこのリサイタルを開く遠因となったのは何とも皮肉な話で、このリサイタルの7ヶ月後には、13歳のときから15年に亘って世話になったプロダクションを去ることになります。
そういった複雑な時期に行われたリサイタルですが、スイッチの入ったちあきなおみは、浮世に吹く風何のそのと、私たちを彼女の世界へ、それも新たな兆を孕んだ世界へと誘ってくれます。