水害を実体験された方々の証言で始まり,これまでの日本の治水のありかたの変遷を丁寧にたどっています.中程では,現地調査の報告や河川工学が専門の新潟大学工学部の大熊孝教授との対談や発言が取り上げられています.大熊教授の堤防破壊による水害被災地観察では,一般にはあまり知られていない所見が述べられていたりと,関係者にとっても貴重です.そうした現地観察や水害体験者の証言そして内外の河川行政の変遷などから,これからの治水,水防のありかたが提示されています.その一つは,水害防備林の復興です.高い堤防にも弱点があるので,それを軽減するために,古来からの手法をもっと復活させようというのです.また,減反で放棄された水田などを河畔にもってきて遊水池にしたりするアイデアも示されています.
このように,著者の意見だけでなく,多数の証言が集められており,客観的に記述しようとする意図には好感が持てますし,文章がとても読みやすいので,幅ひろい一般読者にお勧めです.