週刊誌で、小林信彦さんが、この本のことを書いていました。日本アカデミー賞助演男優賞を獲得した頃に書かれたものなのに、注さんへ、という荒井注の思い出で始まるこの自伝は、まるでいかりやさんの遺書のようだ、と。いかりやさんには、バンドマンとしての経歴があって、TVで人気を博する前に豊富なキャリアを積んでいます。コミック・バンドを目指したのは米軍キャンプで演奏中におもしろいことをすると客が喜び、受けるからだそうです。そのころから、いかりやさんは、人を笑わせ続けてきました。いかりやさん自身は、バンドマンとしても、役者としても自らを4流だったと語っています。ドリフは、素人に毛が生えた程度、一人ひとりではどこからもお呼びが掛からない。だからこそ、徹底的にネタを仕込み、入念なリハーサルが必要で、それを理解してくれたプロデューサーとめぐり合った時、あのお化け番組が誕生します。ドリフは、5人のメンバーがそれぞれ性格や役割を受け持っており、このアンサンブルこそがドリフの笑いだと語られています。長さんは、メンバーチェンジは絶対にやらないことを心に誓っていたそうです。そして、TVというメディアの性格をいち早く見抜いたのもいかりやさんかもしれません。長さんの人生は、戦後の芸能文化の歴史でもあり、率直な言葉の中に華やかな芸能界を一心に生き抜いた人の哲学がこめられていて胸を打ちます。ファンの方には断然お勧めですし、いかりやさんをご存じない方にも読んでいただきたいと思います。