加藤寛氏と言えば、国鉄分割民営化を推進した臨調第四部会長、政府税制調査会会長などを歴任された経済政策のプロ。
その加藤氏が書かれる政治の本なので、さぞかし「きなくさい」ものかと思えば、大変に理論的な本。
かといって、学者の書く本にありがちな現実に理論を強引にかぶせるような印象はなく、また、文体も主婦でもわかるようなものでとても読みやすい。事業仕分けの正体、国民が普段は知りづらい予算編成の過程、民主主義・選挙主義の欠点、マニフェスト選挙の虚実、消費税導入の実践的教訓(最初に還付の話をすべきであった)、政府紙幣発行、新成長戦略(教育・農業など)など、個別の政策論が具体的でわかりやすい。が、総花的でなく、小気味よい。
最後には、官僚主導国家としての課題について触れるが、感情的ではなく、官僚の行動様式を十分に理解した上での批判、改革論が展開されている。
既に80歳を超える老経済学者がこれだけの情熱を注ぎ、日本経済について語る。
いっそのこと、ここに書いてある政策をすべて実現することの方が、他の何かをやるより余程、日本の展望が開けるように思う。
新成長戦略のところに記載のあった医療・介護のところが平易な文章ではあるものの相当に専門的であり、一般読者には相当に歯ごたえのあるものではないか。
ただ、そのことが、この本の価値を減じるようなことはまったくない。久しぶりにお薦めの一冊です。