この本の著者アルフレッド・H・ダンヒルは、1928年に父の跡を継いで、ダンヒル商会の三代目当主となった人物である。本書は1954年に出版された喫煙具の解説書だが、父が1924年に著した「パイプの本」と並び、喫煙者のバイブルとされている書物である。前掲書から30年を経て発表されたこの本は、ダンヒルの喫煙具の製造法および煙草についての詳細な記述が目を引くが、父ダンヒルのやや晦渋な文章に比べてかなり判り易い内容となっている。出版からほぼ10年後、作曲家の團伊玖磨が、英国留学の際に語学習得のために本書を日本語訳したのが、本書がわが国に登場するきっかけとなった。日本語版は1967年、当時氏が「パイプのけむり」を連載していた朝日新聞社から出版された。装幀を手がけたのは若き真鍋博、ダンヒルのパイプの写真を使ったこのカバーは今観ても素晴らしい出来映えである。内容もほとんど古びていないが、絶版になって多くの年月が過ぎた。しかし世界的に嫌煙運動が推進されている現在ではやむを得ないであろう。