本書は動物を主人公にした、様々な冒険のお話が組み合わさって構成されています。自然の描写がとても美しく(それが訳のうまさによるものか、原著の素晴らしさによるものかは私には判断できかねますが・・。)、読んでいて、とても清々しい気分にさせられました。
家庭観や友情、旅、金銭感覚、果てには動物の理科的な知識まで手に入れることが出来る優れた本である、ということが言えると思います。
ヒキガエルが重要な登場人物となることは、読み進めてゆけばすぐにわかると思いますが(「ひきがえるの冒険」を副題とする書籍もあるほどです)、私はヒキガエルの自己中心主義的な性格の印象は、前半、後半、読後とそれぞれ違ったものでした。そのにくめなさは、愛しいほどの正直さと自分の欲望に素直である所にあるのだと思います。とても魅力的な主人公でした。
また「パン神」の存在には少し疑問を持ちましたが、受けた印象としては『ナルニア国ものがたり』のアスラン、つまりキリスト教的な印象を受けました。しかしその他の所で、宗教性を感じる部分があまりなかったので、全体的には薄い印象です。
子どもが本書のような冒険鐔や、ファンタジーといったジャンルに魅了されるのは、家や学校といった「囲われた空間」があるからであると言っていいと思います。我が国では1886年と1900年の小学校令によって、初等教育が義務化、無償化されますが、それは本書の起草された時期と同じくします。
つまりわずか100年間で児童文学は児童文学としての地位を確立してきたと言えます。そのような風潮の初期の団塊で本書の著された意味は、大きいのではないでしょうか。