本書は仏像世界の全体像をコミカルに解説しています。奈良・京都への旅行前に一読するのがお勧めです。中高生の修学旅行前の下調べにも使えそうです。
著者の飯泉太子宗氏は京都の美術院国宝修理所で仏像の修理に携わり、その後、NPO法人古仏修復工房を立ち上げ、仏像や文化財の修復を行っています。美術院とは岡倉天心を祖とする仏像修理工房で、国宝や重要文化財などの修復を担う組織です。仏像を修理するうえで仏教と仏像に関する知識は欠かせませんが、その全体像を把握することは簡単ではありません。本書は特に仏像に焦点を当て、それぞれの仏像が織り成す世界の全体像を分かりやすく解説することを意図しています。
解説はかなりコミカルです。如来と菩薩、明王、天部らをチームとして紹介しています。薬師如来チームの補佐役である日光菩薩と月光菩薩は日照と月照という薬師如来の子供だったのですが、「つまり薬師如来の病院は家族経営なのです(P.18)」という解説は笑えます。また、「明王は不良専門のスパルタ部隊といえます。普通の人には優しい姿をした菩薩が救いに来てくれますが、菩薩の話を聞かない不良どもには、恐い顔の明王がやって来て、問答無用、力づくでも更正させるわけです(P.34)」にも微苦笑を禁じえません。
本書は仏像を修理・保存していく大変さも伝えています。大分県の臼杵磨崖仏の修復に際、「外れていた頭部を元に戻すか、否か」という議論が町を二分したそうです(P.85参照)。また、唐招提寺の千手観音像は手が千本(実際は953本)あるそうで、修復の際に1本外すごとに撮影して記録したそうです。加えて、過去の修復で当初と異なる位置に手が取り付けられていたことが判明したため、全て元の位置に復元したそうです(P.87参照)。陰ながら修復に携わっている技術者の方々のご苦労があって、はじめて仏像が後世に残っていくことを教わった次第です。