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たとえ世界が不条理だったとしても―新・音楽展望2000‐2004
 
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たとえ世界が不条理だったとしても―新・音楽展望2000‐2004 [単行本]

吉田 秀和
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商品の説明

内容(「MARC」データベースより)

グレン・グールド再考、「鍵盤の魔術師」ホロヴィッツ、素顔のリヒテル…。「20世紀の音楽と音楽家」とは何だったのか。ひとつの世紀が終わってから今までの「展望」のすべて。『朝日新聞』連載「音楽展望」をまとめる。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

吉田 秀和
1913年東京生まれ。東京大学仏文科卒業。現在、水戸芸術館館長。1975年『吉田秀和全集』(第1期全10巻)で第2回大佛次郎賞(全集は2004年に全24巻完結)、「わが国における音楽批評の確立」で1990年度朝日賞、『マネの肖像』で1992年度読売文学賞評論・伝記賞受賞。1996年文化功労者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 257ページ
  • 出版社: 朝日新聞社 (2005/11)
  • ISBN-10: 4022500689
  • ISBN-13: 978-4022500687
  • 発売日: 2005/11
  • 商品の寸法: 19 x 13.2 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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形式:単行本
 朝日新聞に連載されたエッセイ「音楽展望」を一冊にまとめたものです。
 私は本書の中の、タイトルに関連するエッセイ「不条理と秩序」を連載中に読み、大変な衝撃を受けました。 それまで著者のことも知らなければ、クラシックもほとんど聴いていませんでしたが、そのエッセイにあまりにも感激して翌日さっそく「平均律クラヴィーア曲集」を購入し、2000年5月24日のその切り抜きは今でも宝物として大事に持っています。

 相次ぐ少年犯罪や衝動的な殺人事件を目の当たりにした著者は、実存主義関係の本にある「人間は不条理の世界に投げ込まれた存在である」という言葉を思い出し、深い疑問に突き当たります。
「だって、どうして他人が殺されたのに自分は幸せでいられるのか、自分はそれに値する何をしたかと考える時、そこに条理が見いだされるだろうか?」
 そして、「なんと空しいことだろう」と、何十年も生業としてきた音楽を聴く気持ちも薄れてしまいます。

 しかし、そんな著者にもバッハの「平均律クラヴィーア曲集」を聴いているときだけは、「この不条理な世界にも何かの秩序がありうるのではないかという気がしてきた」との感慨が生まれます。
 「お互いに殺したり傷つけたりするだけでなく、こういう芸術を作り出す創造的想像力を働かせることも出来」る人間に対する、著者の深い愛情と憐れみが感じられる素晴らしいエッセイだと思います。

 理不尽な苦痛は本当に世の中に満ちていると思います。
わたしの住んでいる近所でも衝動殺人事件が起き、罪のない若い方が殺されました。
しかし、設置された献花台にはひっきりなしに人が訪れ花を供えていました。
 恐ろしい事件が起きる一方、こうしたやさしい感情もやはり意味のあるものであり、冷酷に見える世界の背後にも、なにか深い条理が横たわっているのではないか。
 このエッセイとクラヴィーア曲集に触れるたびそのような感慨が湧き上がってきます。

「人間はもちろんあらゆる生物を死に追いやるのは、私たちを生かし、花を咲かせ実を成らすのと同じ力なのだ」という言葉が深く印象が残っています。
このレビューは参考になりましたか?
15 人中、7人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
評者は20年来の吉田秀和の愛読者であって、本書所収の「音楽展望」もその多くを感嘆しつつ読み終えた。初出時の新聞でも読んだろうが、単行本化された本書で読んでも感銘は変わらない。まずそのことは掛け値なしである。

そのうえで、表題ともなった「不条理と秩序」の一文につき、吉田はこの程度のものを書くべきではなかったと言っておきたい。この一文が書かれたのは2000年。ちょうどこの年から、年間の自殺者は3万人を超え、今年2009年でその水準を微増推移している。

「不条理な」少年犯罪や事故の被害者となる不条理。しかし、その論考(エッセイとはいえ)は、決してその背景に及ぶことはない。運が悪かったという不条理に、バッハの作品世界の条理を対比させて、この長老批評家は何を言わんとするのか? 評者にはまったくわからない。

そもそも、東京生まれの坊ちゃんが、その恵まれた出自によってブルジョア藝術(クラシック音楽)の批評家となり(その事実を誰も否定できまい)、その文筆活動でもかつて社会的な発言はほとんどしていなかったのである。
現在最晩年といっても失礼には当たらないと思うが、90歳に至っている吉田に対して、丸谷才一や大江健三郎やがいかにその藝を褒めそやそうが、音楽とて社会的産物のひとつである以上、社会的な批評や判断とは不即不離であるという事実からすると、吉田の音楽評論はなるほど文藝としての価値はあれど、「音楽評論」としてはいささか軽いものであったことは認めざるを得ないだろう。レコード評論家、コンサート評論家としては最優秀であったとしても。

こういう中途半端な一文をもって、表題の「たとえ世界が不条理だったとしても」などと掲げられると、一体何事が起こったのかと訝らざるを得ない。まして、ちょこっという感じでサルトルなどが想起されている。この一文が、2000年発表の文章であって、2009年の文章ではなかったとしても、評論家のひとりとしてはあまりにも軽薄だったと評者は考えるものである。
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