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5 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
全ては差異を認めることから,
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レビュー対象商品: たったひとりのクレオール―聴覚障害児教育における言語論と障害認識 (単行本)
聴覚障害者教育に長年直接関わってきた著者、上農正剛氏は、本書において、健常者にはなかなか理解できない、聴覚障害者教育の問題点を、分かりやすく記述している。講演記録を中心に作成されているため初心者にも理解しやすい。 共通言語を持たない複数の集団(移民等)が出会い、接触言語としての不完全な言葉(ヒジン)によって意思疎通を行う環境にあっても、それを母語として受け継いだ子供達は、言葉(ヒジン)を整備、統合することで、より完全な言語してゆくという。このような変化をクレオールという。 著者は健常者の母と聴覚障害の子供の関係においても、同様のことが起こるという。多くの聴覚障害者は音声言語が使えても、発音が不明瞭等の理由で健常者にはなかなか理解されない。しかし母親には音声言語で話すことが可能という例がある。他人の言葉は理解できなくても母親の音声言語だけは理解でき、また子供の拙い音声言語も母親は理解する。 しかしこれは、この2人だけに閉じた世界であり、母親がいなくなってしまえば、聴覚障害の子供が作り上げた音声言語世界は全く意味をもたなくなる。 母親は自分の音声言語で出来る限り障害者の子供を理解しようとた結果であり、その背景を考えると切ない。 健常者の親は聴覚障害がある子供が、そのハンディキャップをまるで無いがごとく乗り越えることに価値を置く傾向がある。(学校において障害者クラスではなく健常者クラスを選ぶとか) 著者は、聴覚障害者を健常者と同一価値で見ることではなく、障害という違いを認識することから全ては始まるという。
11 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
ろう教育はどこへむかうのか,
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レビュー対象商品: たったひとりのクレオール―聴覚障害児教育における言語論と障害認識 (単行本)
聴覚口話か対応手話か・はたまた日本手話かという教育手法にかかわる論争が混迷を極める昨今、ろう児にとって最も必要な力は日本語(とりわけ書記日本語)の力であるとする著者の出発点に共感を覚えます。もと哲学の学徒らしい緻密な論理展開で、なぜ聾児に日本語が大切かを説得力ある論法で説いています。障害認識のあり方と絡んで、現在ろう教育のパラダイムは揺らいでいますが、向かうべき方向に大きな変化はないのだと納得させられます。ただし、ろう児に対する日本語教育の現状は「危機的」であると著者は断じます。言葉は教えて育つものではないとする自然主義教育派や、聾児が真っ先に獲得すべき言語は手話であるとする手話一辺倒派に対しては厳しい評価を下しています。 聾児が、社会的文化的経済的な資本としての日本語を十分なレベルまで習得していくためには、地道で息の長い学習活動が必要不可欠であること。また、それは学ぶ側と教える側の双方の継続的な意欲によって支えられること等が、厳しい現状に対する憂いとともに語られています。
7 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
善意でなく理論に立脚した言語教育をめざして,
By しじみがい (奈良県生駒市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: たったひとりのクレオール―聴覚障害児教育における言語論と障害認識 (単行本)
聴覚障害において,その障害(者)に対し,どう見,どう接し,どう教育していくのか,さらに,なぜそう見,接し,教育するのか,各人が徹底検証し「障害認識」を問い直すことが必要であることを説いたもの。聴覚障害をとりまく環境は,旧来の「聞こえる人と同じ」を目指すところから概念的には脱却しつつあるが,聾学校等,現実場面は必ずしもそうではない。本書は,これまでの聴覚障害者の処遇が,善意や常識に基づいてきたがために,現実を変更しがたくなっている,と指摘し,検証可能な理論の上で各人が「障害認識」を絶えず批判的に検討する必要があると主張する。具体的には,日本手話と日本語の非連続性を強調し,バイリンガル教育としての読み書き教育を強く求める。 言語という一見自明なものを教える際,一見自明な常識に基づいて行いたくなる。その結果が,言語教育諸領域で散見される合理的根拠を欠いた因習の塗り重ねと,因習の伝達媒体と化した学習者の量産,という現在だと,私も大いに共感した。 ただ本書では,いちいちがエピソディックかつ類型的に語られ,困難はアイデンティティの問題に収斂させられているが,これでは主張が常識に再回収されてしまう。徹底して理論ベースで記すことこそ,その一見非人間的に冷徹な語り口とは逆に,もっとも「障害認識」へと踏み込んでいけるもののはずだ。 いずれにせよ,言語教育・臨床に関わる方々には,ぜひ読んでいただきたい一冊である。
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