家内のリクエストで買って観た。
元来映画は冒険活劇しかみない。そこにもってきてラブストーリーである。
しかも主人公は大学生の若者、こっちは中年のおっさんである。
まったく期待せず、つきあいのつもりでみた。
ところが、この1年でみた映画で、いちばんよかった。
いや、いままで観た映画のなかでも、もっとも好きな映画のひとつかもしれない。
いったいどこがいいのだろう。
確かに緑を基調とした広角映像は美しい。ポートレート写真のような構図もいい。
しかしストーリーらしいストーリーもなければ、季節感もない。時間もない。
怒鳴る人もいない、声をあげて泣く人もいない。
生涯ただ一度のキス、なんてサブタイトルにあるように、性愛もない。
いまどきの若者を主人公に、リアリティのないこと甚だしい。
それでもなぜ、筆者はこの映画が好きなのだろう。
ありえない話なのである。現実感、生活感が全くない。
しかし主人公のふたりにきちんと感情が入っていく。
現実の恋愛はもっと熱くて、もっと激しくて、そしてもっと自己中心的だ。
恋愛は人の優しい気持ちを何倍にもするが、ずるさや醜さをも増幅させる。
しかしこの作品は、恋愛から「人の優しい気持ち」だけを抽出したかった。
そのために、他は捨てた。
まず、恋愛でいちばん素晴らしくて、いちばんの揉め事のタネでもある性愛を除外した。
次に4年も一緒にいればなんやかやとあるから、季節もなくした。時間もなくした。
だからリアリティがない。しかしそのかわりに、もっとも純粋なものが残った。
玉木宏と宮崎あおいが、いい。
人に勧められるかどうかはわからない。
が、この映画が自分のなかにすっとはいってきたことが
筆者にとっていちばんの驚きであった。