まずはブルーレイとしての画質。これは満足。いくらかの調整は必要だっ
たが、柔らかで細やかな画質は作品の内容ともよくマッチする。音はDTS
-HD MA。実体感が違う。この映画が好きなら、ブルーレイでみて損はない。
主役清兵衛の家禄はわずか五十石。武士の俸禄は世襲であり、よって石高
は保証されてはいるものの、基本的に昇給はない。なかには出世で高位の
役職につき加増されることもあるそうだが、まれなことだったという。
清兵衛は家の事情で多額の借金もかかえており、なおかつ内職の取引先に
賃金アップを要求する際、「諸物価高騰のおり」といっているが、昇給が
ないために物価の高騰は家計を直撃したのである。
つまり清兵衛は欲がなかったというより、貧しさに耐えざるをえなかった
ことを理解する必要があるだろう。
この映画の陰の主役は果たし合いの相手、余吾善右衛門である。登場場面
はクライマックスのシーンぐらいだが、恐ろしく印象が強い。
清兵衛との決闘前のぬらりとした会話の妙、口から吐きだされる血のにじ
む過去、理不尽な藩への憤怒、なにげないことをきっかけに激変する感情、
狭い屋内をフルに使った殺陣、意外な終焉(鴨居をちらりとみる余吾の真
意とは?)、そして崩れおちるときの幽鬼的姿。
とにかく、あまりにもすばらしい。
ただ清兵衛の娘の独白に「父は自分のことを不運だなどとは思っていなか
ったはず」とあったが、これはやや疑問なのだ。まっとうな感覚や常識を
持った人間であれば、この人生はやはり不運と感じるはずである。しかし
それを口にはださなかった。ジャケットにある「そんな父のことを、私は
誇りに思っております――」の言葉はそのように理解すべきだと思う。
制作側の意図とは違うかもしれないが、これが自分の見方である。
それにしても、娘のいとちゃんはかわいい。こんなにかわいい子役はみた
ことがない。この子も陰の主役だ。