20世紀初頭の英国で活躍したガードナー、ルーカス、リンド、ミルンの4人の名エッセイストの肩の凝らない選集です。全32篇。四者四様の発想の違いと文章の芸を味わうことができる。しばしば「イギリス流のユーモアと皮肉」などと十把ひとからげに形容されますが、本書はおそらく、その恰好のサンプルをわかりやすく提示しているといえるでしょう。
かつて受験勉強のときに原仙作著『英文標準問題精講』(旺文社)のお世話になったことがある私のような世代には、なつかしい書き手ばかり。あの頃は内容をきちんと理解する余裕がなくて、おもしろくもなんともなかった文章ですが、いまじっくりと読んでみると、意外にも機知と諧謔に富んでいて含蓄があることに気づかされる。
とりわけ、わが国では『くまのプーさん』と『赤い館の秘密』の作者として知られているA・A・ミルンの才気煥発ぶりが、私の大のお気に入り。
英文を和訳する際にユーモアと風刺の微妙なくすぐりを的確に表現することは、なかなか骨の折れる作業ですが、さすが行方昭夫先生だけあってお上手に訳しておられます。安定感のある瀟洒な訳文。私には大いに参考になりました。
いきなり、こういう翻訳書が登場することがあるから、岩波文庫の毎月の新刊は隅に置けないですね。滋味深くて愉快な一冊。特に、おとなの読者のみなさんにおすすめしたいと思います。