米国の遊技機であるスロットマシンの歴史や発展の経緯について調べる事は、これまでに多数の文献や資料が残されており、容易である。しかし、日本の遊技機であるパチンコにおいては、確かな文献は殆ど存在せず、現存する僅かな資料や古い記憶、あるいは口伝えされてきた話に頼らなければならないため、その作業は困難を極めるようになる。これは、日本では「たかが遊び」に対して人文学的な価値を認めるという文化がなかったためだと思われる。
日本におけるビデオゲームがこのパチンコと同じ状況にあったことは、従って、不思議ではない。関連する書籍が少数ながら存在しないこともないが、それらの殆どはゲーム機の内容の紹介や、開発にまつわるエピソードなど、プレイヤーの視点から書かれた趣味の本の域を出るものではなかった。
本作は、ビデオゲームを軸として、日本のゲーム業界がどう歩んできたかを、業界紙の編集長を長く務めてきた筆者が、確かな取材と緻密な調査で書き上げた、稀有にして第一級の人文学資料である。ビデオゲームは、発祥こそ米国だが、現在までに発達させてきた主役はむしろ日本のメーカーたちであり、日本で書かれなければ今後永久に世に知られることはなかったであろう世界のゲーム業界にとって重要な歴史が、この本には書かれている。ビデオゲームと言う20世紀に発生した世界的に重要な産業を知るための、貴重な一冊である。