うつ病(厳密に言えば、「大うつ病」とか「メランコリー親和型うつ病」と呼ばれる「従来からうつ病として定義されてきた」もの)と、うつ病と似て非なる状態が存在するということ。それを啓蒙し、精神科がパンクしかかってると言う現状を何とかしたい、という事については全く以って同感である。
しかしながら本書を星二つとした理由は二点。
一つは、斜め読みをするとうつ病をはじめとした精神疾患に対する誤解を助長しかねないと言う点である。「うつ病」と「うつ病と似て非なる状態」は確かに存在するが、その区分と「精神科の診療を必要とする状態」と「精神科の診療を必要としない状態」は違う。その点が、軽く読んだだけでは判らない。と、言う点。
もう一つは、最後に述べられた「気分障害」という表記について。本書においては、うつ病と似た症状が散見されるが、似て非なる状態のことを「気分障害」と定義しているが、私の主治医(心療内科)に見せていただいたWHOのハンドブックには「気分障害=ディスチミア」は、「(大)うつ病や、(家族の死などによる起きてしかるべき)抑うつ状態と等をすべて含んだ気分の落ち込みの総称」と、定義されている。よって、本書を読んだうつ病の患者が、主治医に「私は本当にうつ病なんでしょうか? 単なる気分障害に過ぎないのでしょうか?」と、言ったような質問をした場合「気分障害」と言う言葉の定義の違いにより期待した答えが得られず、主治医との信頼関係に無用なヒビを入れかねない。と言う点。
本書は啓蒙されるべき事を述べてはいるのだが、上記二点により安易に、特に精神疾患が疑われる人は、近づくべきではない書であると言えよう。