離婚して、抜け殻のようになってしまった桂さんは、再び「この男の為に、もう一度、生きよう。」と思うに至る出会いをして、それに至るまでの経緯が、事細かに描写されている。
人は、これほど自分の過去を覚えていられるものであろうか。桂さんは、本当に克明に記憶する記憶力をお持ちのようである。
この類い稀な能力がために、彼女は多くの本を出版し、人生の体験記の本をこれまでたくさん出すことができ、愛読者も多く持てたのである。しかし、その同じ能力のために、家庭の不和から離婚へ至る経験を通し、普通の人以上に、精神を蝕むほどに苦しい時期を経験しなくてはならなかったのではないか。
「あのときの表情は・・・だったのを覚えている」
「声の調子は・・・だったということを、元妻は感じ取っていた」
「もし私があの時・・・していたら、否〜もしていたなら、離婚は避けられたのではないか」
彼女は、何度も何度も、牛が美味しい草を反芻する時のように、胸が苦しくなる辛い経験を自分の胸の中で繰り返さざるを得ない。純粋で、孤独な作者の苦しみが、詳細に記されている。 辛い内容ではあるが、作者の清らかな心が映し出され、読み終えた後はさわやかである。