まず、映画の最初1/3ぐらいは、初動捜査のいい加減さ、無罪推定の原則などこれっぽっちも機能していない検察での取調べにショックを受け、腹が立って仕方がなかった。この怒りで映画に引き込まれ、あとは検察と弁護側の知力を尽くした立証合戦を固唾を呑んで見守ることになるので、約2時間半という上映時間の長さは気にならない。そして、裁判での有罪率99.9%という数字が示す、「成果」を死守せんとする検察のあの手この手の論証作戦、自分たちは「おかみ」であるという意識、そしてこれまた安易に「成果」を求めようとしてつい検察側の立証論理を支持する傾向にある裁判官。これまで文章でわが国刑事裁判制度の問題点は知っていたつもりだが、ここまでリアルにその実態を示されると、考え込まざるを得ない。ましてや、近い将来に裁判員制度が始まり、自分が人を裁く立場になったときに、自分は冤罪者をださない自信を持てるだろうか。恐ろしくなってくる映画である。
前作までの周防監督作品のコミカルな味付けはない。しかし、彼が興味を持ったものを映画鑑賞者に徹底的に説明しつつ1級のエンターテイメントに仕上げる腕は落ちていない。脚本・演出等はさすがの出来である。10年以上のブランクを感じさせない。役者さんたちは皆好演。被疑者側の人たちが皆好人物なのが救いである。最後に、男性の皆さん、満員電車の中では、痴漢に疑われないようにくれぐれも注意しましょう。