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主人公の警察官潮崎と武本のコンビ、そしてそれにからんでくる麻薬取締官の宮田のキャラクターも魅力的で、特に宮田が必死にこの事件にくらいつく理由には、ほろりとさせられます。
難をいえば、この作品は途中から犯人が出てきて、重要な情報を主人公たちが解き明かす前に読者が知ってしまうことがあります。
犯人が、そのようなことをする生い立ちも語られていますが、その「不遇な生い立ち」にあまり共鳴できなかったことも「犯人を途中で明かしてしまう」タイプのミステリーとしては面白さを損なっているかもしれません。
ああ、この人がこういうことをするのはむべなるかな、って思わせるほど共感させてほしかったな、と思います。
また、この犯人はインターネットを使って犯罪をし「完璧な手段で身元を隠して」いますが、そのネット知識は、ある程度ネットワークを知っている人には噴飯もの、という欠点もあります。
ただ、それを補ってあまりあるほど、主人公たちがいきいきとしています。特に宮田には、そこまで努力をして犯人を見つけたのにも関わらず、失望するような結末が待ち受けていますが、それを明るく受け止め次の道に進む彼には、大いに共感しました。
ミステリー、というよりは、三人の若めの男性の成長を描いた青春小説、という感じがしました。
細かく見れば、デビュー作ということもあるのか、アラはありますが、読んでいてそれを感じさせないパワーがあり、楽しんで最後まで読めました。
しかし警察小説となると、アンチヒーローには日本ではそうお目にかからない。アメリカのよれよれの警官(たとえばウォルター・マッソーやバート・ヤングに演じて欲しいような種類の)がいかにも日本にはいそうもないし、日本警察官というとどうしても体育会系、柔道剣道大必須みたいな印象があったりするから、小説という文化の中でもいわゆる柔らかい警官というのはなかなか出現してこなかったのだと思う。
『踊る大走査線』の人気というのは、若いのにどこかよれよれで悩む現場刑事の能力以上の活躍を描写したことで生まれたものだと思う。『大都会』でも『太陽に吼えろ』でもない、どこか庶民にとって等身大の刑事っていないの? というような願望が生んだヒューマンなドラマとでも言うべき存在。最近は『はぐれ刑事』とか『ケイゾク』とか(ぼくはちゃんとは見ていないけれど)そういったアンチヒーロー等身大刑事というものが、他の多くのアクションドラマと併走しているように見えるのだ。
だから日本警察小説界にもそろそろそういう種類の小説世界が確立してもいいのだという世間からのニーズに対しちゃんと出てきたのが、この作品であったのだ、多分。名だたる警察小説のヒーローをミーハーとしてこよなく愛する若い世代の刑事の出現。これだって書き方がお粗末であればニーズを満たすことはできなかったはずなのだが、なんとも味のある文章、それなりに女性らしく繊細で生真面目な描写。何よりも丁寧に作られた人対人という構図にフォーカスした姿勢。
極めて日常的な、ぼくらに近いところに刑事たちを引き寄せて、言い方を変えれば事件はそっちのけで警察署の中の描写に重心を置いたスタンス。そういう意味ではとても新鮮だし、今まであまり日本小説では味わったことのない、欧米なみの生活臭のある人物たちである。全然格好良くなく、そのくせ頑張り、時には鋭く、でも大きなミスメドをし、どこまでもアンチヒーローな身近な刑事たち。
作者もおそらく警察小説のミーハーなのだろうなと思う。読むことが好きで、書くことが好きで、そして多分、自分で造形した刑事たちが何よりも好きだろうと、そう思える作品である。ある意味大変に素晴らしい現象ではあると思う。
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