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漱石は、「三四郎」の美禰子を「無意識の偽善」と呼び、自分が偽善者であることに気付かない人のことを批判しています。「それから」の代助は、この無意識の偽善者ぶりを余すところなく発揮しています。代助は、生活のために、ぎりぎりのところで理想を諦め、現実と妥協して生きている友人平岡、父、兄を冷ややかに観察し、断罪します。しかし、代助自身は理想は高いものの、臆病者で行動力がなく、その事実を知らぬは本人ばかりです。自分のその行動様式の結果として、周りの人間全てを不幸にし、なお己に問題がある、とは認めない代助の「無意識の偽善」の罪はそれだけ深い、と言えるでしょう。
理想と現実のバランスを、どこかで取らなければ生きていけない。これは、そんな人間の悲哀を、理想の側にいる代助、現実の側にいるその他の登場人物のぶつかり合いを通して表現している、素晴らしい小説です。
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