子ども向けであるが、内容はシンプルで力強く、アニメーションとしての質も相当に高い。そのため、大人が観てもしっかり感動が伝わる。後半最大のクライマックスに、男性重低音のアカペラでクラシック風にテーマソングが流れるが、そのシーンは音楽美術の映画的重奏が生まれ圧倒的な迫力を持ち素晴らしいの一言である。
バイキンマンが偶然作りあげたモンスターが世界を破壊しようとする。「フランケンシュタイン」物語モチーフを非常にうまくアレンジしているわけだが、とてもアンパンマンシリーズとは思えないほどの恐怖の緊張感を成立させている。バイキンマンが敵役ならナンの怖いこともない。実際この映画では、なんとタイトルクレジット前のオープニングエピソード3分でいつものようにアンパンチでぶっとばされている。つまり「いつものテレビのアンパンマン」が終わった所からこの映画は始まっているわけだ。まずこうした着想と構成が素晴らしい。
しかしこの映画のすばらしさの本質は、別の部分にある。
「なんのために生まれてなにをして喜ぶわからないまま生きるそんなのは嫌だ」
というあのテーマソングの歌詞を受けて
「じゃあなんのために生まれてきたのか」
というあらゆる人にとっての最大のテーマに、はっきりと力強く、確信的な回答を与えていることだ。
人生の一大命題に対し、明白な回答を、わかりやすく、おもしろく伝える。しかも説教臭さはなく、むしろ感動的に。ありきたりな展開なのに、スレた大人もつい涙を流すような美しい物語として、心に直接的にビンビン響かせます。「なんのために生まれてきたのか」。
まさかアンパンマンシリーズでこんなに優れた映画が存在するとは思いませんでした。アンパンマンのことをろくに観たことがない私のような大人が、あのシリーズのフトコロの深さを思い知って、その見方が一変してしまうような、傑作と言えます。未見の方は、ぜひ。