2003年から2006年にかけて川上未映子さんのブログに書かれた文章が抜粋されて単行本となり、そして文庫化された本です。
今振り返れば芥川賞作家の処女作ということになりますが、ブログを書いていた当時はこのテキストたちがまさか活版印刷され装丁を施され書店に並ぶとは思っていなかったのでしょう、近作よりもより奔放で踊るような文体が痛快です。
・シルバニアファミリーの話
・ジャッキー・チェンの話
自分には、家族の思い出を描いたこの2編が群を抜いて素敵に思えました。
彼女の文章を読んでいるとしばしば、自分が小中高校生だった頃の記憶だったり感情がふわりと呼び覚まされて、「ああ久し振りにこのこと思い出した」みたいな感覚に包まれることがあるのですが、この2編を読むと、彼女が幼いころから日常の出来事を大切に織りたたんで心に収めていたことがよくわかります。
しかしながら、なんとも強烈な家庭ですが...。
「処女作にはその作家の資質の全てが込められている」
といわれますが、処女作と気負わず書かれ、図らずも世に出てしまったこの作品は、彼女の資質そのまんま、というか、彼女の頭の中そのまんまが焼き付けられており、今後の彼女の作品の種は、間違いなくこの本の中に存在するという気がしています。