「萌え」とか、どうでもいい。電撃文庫の読者平均層に目を向けられないのではと危惧するが、そのまま埋もれてしまってははなはだ残念でもある。ゆえにへたっぴなりにレビューを書かねばならぬと思い立った次第。
エプロンドレスを着ていても、心はいっかな野球バカ。「めざせ甲子園」ただ一直線。勝つために、甲子園へ近づくために、ありとあらゆる手段を講じるヒロインは監督である。最新のピッチングマシンを購入し、部活動の妨げにならぬよう合間をぬってマシンの割賦払いのためアルバイトにも勤しまねばならぬ。その上、栄養学的見地から新入生を指導するべく食事を作って持っていき、選手を鼓舞せねばならないのである。この顛末は少々強引に感じるが、読者の感想や如何に。
対する今巻の主人公、元リトルシニア「日本一」エースの覚悟が不徹底におもえて序盤は少々ツラい。しかるに彼は故障経験がある。黄金の左腕といわれた自らのヒジを一度ぶっ壊してしまったのだ。野球名門校の、希望校のセレクションには合格できず、無名校に入学してきたところである。しかし密かにリハビリを続け、医者に脅されながらも野球を辞められず、なお投げることに執着している。野球部に正式入部しユニフォームを着る、それだけに逡巡してしまうこの第一巻は雌伏。それでも遂にマウンドへ上がった彼もいっかな野球バカであろう。この後も、必ずやその執念と新たに身につけた侠気を発揮してくれるに相違ない。
主人公が屈託しているため春の公式戦以前の練習シーンをかなりカットせざるを得なかった構成と、初刷の誤字とおぼしき怪しい表記で、誠に残念ながら「☆」マイナス1個。終盤の試合描写だけでも「☆☆☆☆☆」やりたいところだが……ナイン全員、このままでは終わらぬ野望と侠気を秘めている。関西シニアで高名だった、だが左投げの二塁手を「ポジションはセカンドで」スカウトする心意気を感じて欲しい。刮目して続刊を待とう!