颯爽と立つ純白の水着姿。すらりと伸びる有蹄類の如きおみ足に,全ての足フェチが瞠目した本盤は,ご存じホイットニー嬢が1985年に発表したデビュー作。歌手デビューに先立つこと4年の17才からモデルとして活躍。ジャケットにも,応分の実績と自信の裏付けがあった。実は彼女,玄人好みのゴスペル歌手シシー・ヒューストンの実娘。同じアリスタの看板スターだったディオンヌ・ワーウィックも従姉妹だった。母の下で早くからバック・コーラスを務めてゴスペルの下地を修得。モデルの余芸は日本にも良くあるパターンだが,この時点で俄か仕込みのそれとは比較するのも憚られるほど本格派になっていた。
佳曲揃いながら,ありがちなブラコン・サウンド。その雲間を突き抜けるかの如く,朗々と伸びる美声に目を丸くした人は多かろう。ただ,これほど才色兼備な彼女にも,ひとつだけ決定的に足りないものがあった。音楽家としての素養である。なまじ歌が並外れて上手く,美貌も備えていたことが,結果として彼女を不幸へ駆り立てることになる。
本盤の大ヒットにより,彼女の周りには大挙,音楽商人が群がった。彼らの意のまま流行りの音を歌わされる彼女に,自らを省みて《彼女の色》を探求する暇など与えられる筈もない。やがてアルコール依存症となる彼女の痛々しい姿は,そのまま音楽業界の毒々しい華の色を体現していた。