書いてある内容の是非は他のレビュワーの方の意見を参考にしていただくとして,これは良い本です.何故なら,論拠の大部分に参考文献が明記されていて,いわゆる検証可能性があり,疑問点を追試可能であるからです.つまり,もし読んでいて「これはどのような条件で行ったのだろう?」と疑問に思ったなら,その実験内容にあたって確かめられるということを意味します.
科学の世界では当たり前のことですが,この「当たり前のこと」が無視されている本が,自己啓発書の類では多いように思います.その点でこの本は,人によってはカーネギーの本を読むよりもずっと役に立つかもしれません.ただし参照先が全て英語+学術誌・洋書であるので,実際の参照には壁がある点に注意を要します.
従って,これは啓発書というよりはむしろ科学書の趣が強いです.一般的な科学に興味がある人や,自己啓発本の科学,といったことに興味がある人向けだと思います.内容そのものは社会心理学のものが多く,それ系の人には常識的ではあり,若干の疑問点や納得いかない解釈もありますが,値段は安い上によくまとまっています.付き合い上,自己啓発本をよく読む人と折衝する際などに役に立つかもしれません.
啓発書そのものが好きな人は,自分にメリットがあるかないかの意味で他の本との区別が付かないと思います.科学的思考法の説明をしているのであり,本の内容を実践するだけでは恐らくそのうち行き詰まるからです.