美しい表紙とタイトルに惹かれて手にした本だったが、おそらくは児童書の範疇なのであろう。
最近の児童書は、極めてやさしい言葉でつづられているものが多いように思えるのだが、本書はおとな向けの本と大差ない端正な言葉遣いで物語がかたられていく。
よい人間だからといってしあわせになるわけではない。悪い人間だからといって、罰を受けるわけではない。世の条理も不条理も、ともにこの世界の真実の姿である。正史が目を向けようとしない歴史の暗部のなかでも、人々は生き、そして死んでいくのだ。
18世紀英国の社会的常識は力弱い者にとって惨いものであるが、それを作者は「悪」とさえ規定していないように思える。
昨今、児童書に限らず、関心が「自分自身」へばかり向いている枠組みの小さな話が多いように思える。そのなかでは稀に見る、物語そのものを語る、大きな円を描く物語であろう。