主人公の波(なみ)は小学4年生の女の子。ひょんなことからご近所のお年寄りの犬を散歩させることになるが、その家の二階には幽霊が出るという噂。好奇心から二階に上がった波はそこで不思議な少年、朝夫くんに出会う。すっかり仲良くなったふたりだが、朝夫くんの存在は波以外誰も知らない。果たして朝夫くんは幽霊なのか?
おとなは「あなたのためだから」といって子供のまえに見えないレールを敷いてしまう。波のお母さんもそのひとりだ。好きでもないソフトボールも進学塾も、「将来のあなたのため」と言われると、そうなのかなと思う。思っていることをスポンジのように吸い込んでしまうお母さんに対して、波は言いたいことを言えない辛さを抱えている。のどに重たい石がひっかかっているような感じだろうか。「がんばりなさい」「がんばろうね」その言葉は子供にだって重すぎることがある。
朝夫くんと知り合って、楽しく過ごすうちに少しずつ変わっていき、自信が芽吹いていく波。小学生の少女の心の葛藤を描いたすがすがしい作品。朝夫くんの意外な正体も読んでいて楽しい。