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ハードボイルド小説らしく,主人公は絶え間なく斜に構えたスタイルでつぶやきつづけるのだが,そのなかに,ときどきキラリと光るモラリスト的な一節がある。たとえば,離婚問題で揺れる,仕事でもめて会社を辞職した夫と資産家の娘である妻と夫婦についての,「単に世間とのつきあい方が下手なだけの若い世代なのだろうか。決定打を打つ前にジャブの応酬がないのだ。だから,摩擦が生じるといきなり破局を迎える。」といったような記述など。小説の通奏低音として,「失われた大義」を重んじる倫理感が,薄明かりのような響きをきかせている。
ストーリーはもとより,全体の雰囲気(著者のまなざし),日頃聴けないセリフの応酬も楽しめる,まさに正当派,日本のハードボイルド小説。
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