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そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命
 
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そして世界に不確定性がもたらされた―ハイゼンベルクの物理学革命 [単行本]

デイヴィッド リンドリー , David Lindley , 阪本 芳久
5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

1927年、若きドイツ人物理学者のハイゼンベルクは、量子力学の根幹をなす「不確定性原理」の考え方を初めて世に送り出した。すなわち、因果律に従い完璧に予測されるものだと考えられていた世界が、偶然と確率と可能性に支配された不正確なものに代わってしまったのである。これはあまりにも革新的な概念だった。当時すでに著名な科学者であったアインシュタインはこの原理を認めようとせず、また、ハイゼンベルクとその師ボーアとの間にも確執が生まれた。科学界だけではなく、文学や哲学にも大きな波紋をよんだ。だが、量子論と不確定性の考え方は、ある日突然現れたものではない。浮遊した微粒子がランダムに動くブラウン運動など、19世紀には不規則で統計的な現象の存在が明らかになっていた。また、第一次大戦後、敗戦国の屈辱を味わっていたドイツには、科学者の間にも決定論的な運命を認めたくないという向きが強まっていた。あとはただ一人の若き秀才の登場を待つのみだったのである。世界を揺さぶった不確定性の概念と、それをめぐる著名な科学者たちの人間ドラマとをみごとに描き出した、渾身の科学ノンフィクション。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

リンドリー,デイヴィッド
1956年生まれ。サイエンスライター。バージニア州アレキサンドリア在住。天体物理学で博士号を取得し、ケンブリッジ大学、フェルミ研究所に勤務後、ネイチャー、サイエンス、サイエンスニュース各誌の編集をつとめた

阪本 芳久
1950年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学工学部卒業。出版社勤務を経て、現在は翻訳業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

  • 単行本: 289ページ
  • 出版社: 早川書房 (2007/10)
  • ISBN-10: 4152088648
  • ISBN-13: 978-4152088642
  • 発売日: 2007/10
  • 商品の寸法: 18.8 x 13 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.8  レビューをすべて見る (5件のカスタマーレビュー)
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By ガアタ VINE™ メンバー
形式:単行本
量子力学誕生をめぐる著作は数多く、いずれもたいては面白いのですが、この本はずば抜けて面白い。なぜなら、この本の著者リンドリーの目を通した、主役(アインシュタイン、ハイゼンベルク、ボーア)から脇役(シュレディンガー、ディラック、パウリなどなど)までの人物像の描写が、生き生きとしているからです。例えば、シュレディンガーには妻以外に複数の恋人がいたこと、アインシュタインとボーアが互いを尊敬する手紙を交わしていたこと、シュレディンガーの猫のアイディアの元が実はアインシュタインだったこと、など細かい逸話話を混ぜつつ、最終的には物理学への姿勢や量子力学をめぐる立場の違いをリアルに感じさせる内容につながっていきます。群像ドラマとしても十分に面白くできています。

この本の核となる主題である不確定性、相補性、これらが物理学会に与えた影響、さらに哲学などの他分野の反応を情報として羅列するのではなく、その背景にまで踏み込んで詳細かつリアルに描写しています。著者は相当の参考文献、書簡に目を通していると想像されます。だからこそ、これだけの描写が可能になったのでしょう。著者の知識の幅広さは、その当時の作家D・H・ロレンスの詩(下記)を効果的に引用していることからもうかがえます。

相対性理論と量子論が好きなのは
私にはよく分からないから。
(中略)
そして原子はまるで衝動に身を任せ、
しょっちゅう気を変えているかのようだ。

量子力学に興味のあるさまざまな人にお勧めできる一冊です。
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壮大な戯曲 2008/1/5
形式:単行本
20世紀の物理学における最大の発見とも言われる「不確定性原理」。本書は、その深遠かつミクロな原理をテーマに、アインシュタイン、ボーア、ハイゼンベルクの三人の天才物理学者が織りなす壮大な戯曲だ。またこれは、常識的な人間の感覚からすれば魔法のようにも見える量子力学の解釈を巡って、時に苦しみ、時に歓喜する三人の主役たちの壮絶な知能戦が垣間見られる極上の知的エンターテイメントでもある。そして、主役の三人は言うに及ばず、脇役でさえシュレーディンガー、プランク、ディラック等、物理学界のビッグ・ネーム揃い。20世紀物理学の英知の物語がこの一冊に凝縮されているといっても過言ではない。

というかもう、表紙の写真からして超有名なアレ(第5回ソルヴェイ会議)だし。

ちなみに本書には、不確定性原理を鳥瞰し、物理学の深みに触れているにも関わらず、数式が一切出てこない。これは奇跡だ。少なくとも、物理は好きだが数字があまり得意ではない僕にとっては。もちろんそれは、世界最高の知的財産を一般人が理解できる形に敷衍しきった、著者の見事なまでの筆力があってのことだが。

世界はいかにして不確定になってしまったのか。

それを知りたい不確定な世界を生きるすべての人に。
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By
形式:単行本
古典物理学の実在観と因果律を破壊した量子的不確定性の正体はいったい何なのか!? 原子スペクトルのデータなどと格闘しながら量子力学を作り上げていく際にハイゼンベルクら若き物理学者たちがいかにして過去の物理学的伝統と縁を切る大胆な決断をなしえたのか。その一方、量子的不確定性を断じて原理的事実としては認めず単に量子力学の不完全性を意味するものにすぎないとするアインシュタインらの猛烈な抵抗。

本書で巧みな描写で描かれる量子力学の形成過程は、トマスクーンの『科学革命の構造』が自らのパラダイムシフト論の実例として頻繁に引証したものでもあり、なるほど旧パラダイムから新パラダイムへの転換がいかに激烈なまでの不協和音を生じさせるものかが本書を通じてより臨場感をともなって理解できるようになりました。『科学革命の構造』を読んだあとに本書を読むと前者の理解が深まりそうです。逆に、本書の読後に『構造』を読めば実感をもってクーンの科学史像を理解できるようになるでしょう。

ドキュメンタリーは登場人物の言葉に全てが凝縮されてますよね。古典物理学の大御所レイリー卿がボーアの原子論を聞いて「私には無意味だったよ。私の性には合わんのだ。」と述べたとされるエピソードやアインシュタインが晩年ハイゼンベルクに「君のやっている類の物理学が性に合わなくてね。」と語ったとされるエピソードに、パラダイム転換の時代に生じる新旧の軋みがいかに大きいものかが如実に語られているように思えます。

もちろん本書は『構造』とは何の関係もなく、あくまで量子的不確定性というものが自然の根底的原理なのか否かをめぐる知的葛藤のドラマを描いたものであり、そうした不確定性の思想の源流は実は熱力学にまで遡ることができるということ、それゆえ自然理解に対して不確定性は実はしだいにそれと気づかれることなく忍び込んできていたものであること、ハイゼンベルクの不確定性原理の発見はその明確な自覚に他ならなかったのだということ、以上が著者リンドリーの主張したい科学史像のようです。

熱の分子運動論のいう確率とコペンハーゲン解釈のいう確率は根本的に性格が違うわけですが、しかし、ともかくも確率的理解の登場によって決定論的世界像はしだいにほころび始めていったのであり、量子的不確定性の出現以前から物理学には決定論の崩壊の兆しはあったのだと。確率によってしかとらえられない物理過程があるという認識の出現と確立の歴史的展開の流れの延長上に量子力学の出現を見るべきなのだというわけですね。思想史的・問題史的に再構成された歴史像だとは思いますが、勉強になります。
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