震災後の(東京なので家具がこわれた程度ですが)心の芯が落ち着かない日々、佐藤さんの作品が心に働きかけてくれるのでは、と手にとった。
北の都市で業績不振の造船所をやめてしまった達夫がパチンコ屋で出会ったバラック住まいの前科持ちの拓児、その姉の、体を売ることもあるホステスの千夏。三人の出会いが時には暴力を呼び、時には欲望を呼び、ここではない生活への希望を呼ぶ。
佐藤さんの平明な散文は、苦すぎず、苦しすぎす、痛すぎず、まるで取り立ての光や風や水分を含んだような青春像を描き出す。文学たろうと技巧を表に出しすぎないことで(だから生前、高い評価を受けられなかったのかもしれないが)、人物が身近に感じられる。
佐藤作品、これにとどまらず文庫化されるとのこと。続けて読んでしまおうか、この息苦しい日々に。