少年時代の美し過ぎる時間に起きた由無し事々が、時間を経てみると何にも代え難い輝きを放っていた、そんな経験が淡々と綴られたエッセイ集です。辻仁成さんの人生観がひしひしと伝わって来るお薦めの一冊です。
転校を繰り返していた少年時代に起こった数々の友人達の思い出が克明に甦る、その美しさを正直に綴りつつも、過去の思い出の地を訪れてみるとかつての友人達の記憶の中には自分は居なかった、そんな時間の流れの尊さと儚さを両面から描いています。
筆者の中には、未だ当時の青春時代が続いているのだと思います。過去の時間を胸の内に秘めて描かれる辻作品の根底にある何かを、この1冊から薄っすらと読み取れるような気がします。辻仁成のエッセイ集として別に1冊、「そこに君がいた」もお薦めです。