取り上げられているのは、みな、昭和の香りのする料理ばかりである。
池波正太郎氏の食エセイの中から、厳選し、ゆかしき料理の、作り方をイラストで記す。
私が好きなのは、「侍の食膳-素麺」と題する一編である。
晩年の曾祖母と暮らした、正太郎少年は、けんかで負けて帰ってくると、
曾祖母に必ず、「仕返ししておいで」と言われた。 勝って戻ると
決まって「洋食屋のカツライス」をおごってくれた。
さらに亡くなる間際には、「わたしは、毎日素麺が食べたい」
といい、正太郎少年は、自分で、汁を作り、素麺をゆでた。曾孫の作った素麺を
曾祖母は,相好を崩して食べ、いつも五銭小遣いをくれた、そうだ。
いい話である。
ちなみに曾祖母は、摂州尼崎四万石松平遠江守の奥女中を勤めたひとだったという。
読めば、食べたくなり、心が休まる。